「スピーキングテスト」活用で社員の英語力の伸び悩みを解消

企業が英語テストを導入する目的は、昇進や海外赴任の条件等さまざまです。では研修担当者は、数ある英語テストの中から、どのようなテストを選ぶべきでしょうか。今回は、大学入試センターの荘島先生のご講演を元に、英語のテストと学習効果の相互作用の観点から、社内で英語テストを採用するポイントを考えます。

荘島先生のご紹介

2021年10月8日、独立行政法人 大学入試センター 研究開発部の荘島宏二郎准教授をお迎えして、オンラインセミナーを開催しました。多変量解析、テスト科学の専門家の荘島先生に「試験と学習効果の相互作用」というテーマで、社内人材の英語力向上とスピーキングテストに関心をお持ちの、法人の人事・研修ご担当者様に向けてお話しいただきました。

テストを利用し、人材のスピーキング力を伸ばす

今年2021年度から、従来の大学入試センター試験に代わって、「共通入学試験」(以下、共通テスト)が、大学入学者選抜に導入されました。大学入試センターでは、新しい共通テストの英語において、スピーキングとライティングを含む、4技能テストの導入を目指していましたが、残念ながら今回は導入断念という結果となったのは、ご承知の通りです。

この結果について、荘島先生は次のように述べておられます。
「もし、スピーキング、ライティングテストが導入できていたならば、その波及効果で、高校生をスピーキングやライティングの勉強へと、積極的に向かわせることができたでしょう。その結果、高校生のスピーキング力やライティング力を、もっと伸ばせただろうと考えています」
つまりこれらのテストは、実力を測定評価する指標というだけでなく、実際に学生のスピーキング力やライティング力を伸ばす、良いきっかけになっただろうというのです。

これを企業の人材育成に置き換えてみましょう。
社員にスピーキングテストという機会を提供すると、受験を決めた社員は、主体的にスピーキングの勉強に励むようになります。受験という目標があればこそ、学習者は集中してスピーキングを練習し、結果的に力がついてきます。

整理すると、
スピーキングテストを導入することで

  1. ①企業は社員のスピーキング力の把握が可能になる
  2. ②受験に向けてトレーニングをすることで、社員のスピーキング力自体が向上する
  3. ③トレーニングを続けて定期的に受験すれば、長期的にテスト結果は少しずつ伸びていく

といった流れが想定されます。

英語の4技能とスピーキング

英語の4技能は、みなさんよくご存じだと思います。その4技能中、スピーキング力はどのような位置づけになっているのでしょうか。

英語の4技能とは

英語の4技能とは、「読む」、「聞く」、「書く」、「話す」という、4つのスキルです。
「読む」と「聞く」は、英語で情報を受けて理解する‘インプット系’のスキルです。一方、「書く」と「話す」は、自らが英語で情報を発信するための、‘アウトプット系’のスキルです。
今回、荘島先生にはこれらの4技能におけるスピーキング力の位置づけについて、解説いただきました。

4技能中のスピーキングの位置づけ

受験英語の影響もあってか、私たちは英語を勉強するというと、どうしても ‘インプット系’の学習に偏りがちです。しかし先生は、「英語の4技能は、それぞれが独立して存在するわけではない。お互いに影響しあっている」と、繰り返し語っておられます。

これが思った以上に重要な指摘であることは、学校英語を中心とした、10年以上にもおよぶ私たちの英語学習歴を振り返ると、すっと理解できるのではないでしょうか。

リーディングだけ一生懸命に勉強しても、リスニングだけがんばって練習しても、それだけでは英語が使えるようにはなりません。英語力全体を底上げし、使える英語を身につけるには、‘アウトプット系’のトレーニングが欠かせないのです。

「リスニングやリーディングで伸び悩んでいるなら、スピーキングなどの‘アウトプット系’の練習を取り入れてみてください。アウトプット力がつくだけでなく、‘インプット系’の力も再び伸び始めることがよくあります」と、荘島先生はアドバイスしてくださいました。

スピーキングテスト導入で、英語力の伸び悩みを乗り越える

荘島先生のお話を元に考えると、企業がスピーキングテストを導入した場合、2つの効果が期待できそうです。

社員のスピーキング力の向上

会社がスピーキングテストを導入することで、対象となる社員は、「テストを受ける」という具体的な目標を設定できるようになります。その目標に向けて、スピーキングに特化した練習に取り組むわけですが、明確な動機があるため、学習に対する積極性や熱量は、漫然と学習しているときよりも高くなります。個々の社員で違いはあるにせよ、練習をした分、スピーキング力の向上が期待できます。

社員の総合的な英語力の向上

単語や成句を暗記する、目や耳から入る英語の意味をとらえるといったインプット系の学習では、知識を蓄え、入ってくる情報を理解する力が鍛えられます。しかし、英語の知識がそのまま英語の運用力になるわけではありません。総合的な英語力を養うには、インプット学習で培った土台のうえに、その知識を使って自分の言葉で表現するための、アウトプット学習を重ねていく必要があります。

「4技能は相互に影響し合い、連動しながら伸びていく」との荘島先生の言葉も、このことを意味しています。先生はまた、「インプット系(リーディングとリスニング)の学習ばかりでは、英語力の伸びには限界がある」とも指摘しておられますが、アウトプット学習で変化を取り入れることにより、バランスの良い学習が可能となります。
企業研修に英語関連のテストを導入する際も、この点を少し意識してみましょう。特に社員の英語力を総合的に底上げしたい場合は、4技能を網羅したテストを採用する、複数のテストを組み合わせて採用するなど、対象者が英語の4技能をまんべんなく学習する環境を、作り出すことが大切です。

どういうテストが「良いテスト」

さて、それでは具体的に、どういう英語のテストを採用すれば良いのでしょうか。荘島先生がいらっしゃる大学入試センター・研究開発部では、共通テストの改善や、個別大学の入学者選抜方法の改善を目的に、さまざまな研究を行っています。その知見を元に、先生は「測定、説明、存在」という三つの文脈で、「良いテストとは何か」を解説してくださいました。少し専門的になりますが、かいつまんでご紹介しましょう。

「測定の文脈」からみた良いテスト

受験者の能力・学力を正確に測定できるテストは、信頼性の高いテストです。測定しようとする力を的確に測定・配点できること。能力が高い人ほど高い点、低い人には低い点がつく妥当性が担保されていること。さらに、同じ条件下で同じテストを受ければ、同じような結果が出るというように、結果が常に一貫し安定していることも重要です。

「説明の文脈」からみた良いテスト

テスト結果には、受験者の学力情報がふんだんに詰まっています。そのデータを適切に分析し、受験者や教師、企業であれば研修担当者などにフィードバックし、テスト結果からわかったことを説明しうることが望まれます。

「存在の文脈」からみた良いテスト

良いテストは、それが存在することで、人や社会にポジティブな影響を与えます。受験者にやりがいを感じさせ、その学力を少しずつ底上げしてくれます。受験者が徐々に学力を伸ばしていけば、それに対応したレベルのテストが用意されています。

テストを実施することの可能性

荘島先生は、「良いテストは、私たちの学習意欲や日常の学習習慣にも、ポジティブな影響を与えます」と言葉を続け、セミナーに参加した企業関係者は、それぞれ関心をもって耳を傾けていました。テストを上手に活用すれば、英語のスキルアップを望む社員に、はっきりとした動機づけの機会を提供できますし、社員の‘やる気’を引き出し、達成感を感じてもらえます。さらに総合的な英語力強化を図ることができれば、会社にとっても大きなプラスになります。ぜひ適切なテストを選んで、ポジティブな人材育成に役立てたいものです。

とはいえ、英語のテストには具体的にどんなものがあるのかわからない、あるいは、テストの種類が多すぎて迷ってしまう、ということもあるでしょう。4技能の中でもスピーキングテストの選び方については「スピーキングテストとは? 失敗しないための選び方」の中で詳しくご紹介しています。ご参照ください。

まとめ

あなたの会社では、研修プログラムの中で、どのような英語テストを採用していますか?本当に自社に合った対応ができているか、下の項目を参考に、チェックしてみましょう。

  • 社内で現在採用中、または検討中の英語テストはありますか?
  • そのテストは、4技能中どのスキルを測るテストですか?
  • そのテストは、会社が知りたい社員の英語スキルを測るテストですか?

    例: 社員の口頭による英語運用能力を把握したい ➡ スピーキングテストを採用
       社員の英語文章力を把握したい ➡ ライティング系のテストを採用
  • 社員に英語力の伸び悩みが見え始めていませんか?
  • 4技能のバランスに照らして、導入中のテストでは扱わない、別の技能を測るテストが必要なタイミングに差し掛かっていませんか?

    例: リーディングのテスト一辺倒 ➡ スピーキングテストは必要ないか

社員の英語力に伸び悩みを感じたら、4技能のバランスや、部署・職種ごとに必要な英語スキルに焦点を当てて、対策を考えることをお勧めします。さまざまな英語テストの中から、自社の実情に即した、真に効果的なテストを導入するようにしましょう。

荘島先生にもご協力いただいたアルクのTSSTは、英語4技能のうち、スピーキング力を正確に測定できるよう開発されたテストです。2020年の改訂を経て、セミナーでお話があった「測定の文脈」、「説明の文脈」、「存在の文脈」の3つの観点についても、いっそう精度が増しました。信頼性と妥当性と利便性をかなえるTSSTについて、詳細はこちらをご覧ください。

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